ひな祭りで飾る雛人形は、さまざまな種類があります。
中でも、一番古い形と思われるのは「流し雛」でしょう。ひな祭りは、元々、人形(ひとかた)にけがれを託して海や川に流していたので、流し雛は古い風習の名残だと言えます。源氏物語にも、人形を上巳節に流す場面が出てきます。現在では、「下賀茂神社」などで流し雛の行事が、多くの地域で行われています。
お雛様というと、まず、座っているお雛様を思い浮かべる人が多いでしょう。元々、「ひとかた」であったことによると、立っている「立雛」の方が古いと言えます。江戸時代初期までは、立雛が残っていたようですが、ひとかたの名残から“紙”で作られていました。そして、時代が進むにつれて、座雛が主流となりました。
江戸時代には、雛人形は大きく発展していきました。雛人形には地域性が現れ、ある地域から発祥したものが、各地に伝わったものも現れました。また、雛人形が豪華さを増していった一方で、素朴で味わい深い人形もたくさん作られていました。その代表的なものは、「土人形」や「木目込人形」、「吊るし雛」です。
「土人形」で有名な三河では、近くに焼き物の街があり、質の良い粘土が産出し、さらに職人も多くいたため、土人形が盛んに作られるようになったのです。
「木目込人形」は、京都で発祥した桐塑製や木製でできた人形で、後に江戸に伝わって、「江戸木目込人形」としてその後発展しました。
「吊るし雛」は、伊豆が発祥と言われています。1本の紐に縁起物のぬいぐるみをいくつか結んで、それを横に並べて吊るしたり、環状にして吊るしたりします。縁起物は地域によって異なりますが、金魚、まり、動物などの人形などさまざまなものがあり、意味が1つ1つに込められています。当時、裕福ではない家庭で、ひな祭りに子どもをお祝いするために、身近にある材料を使って作られました。